あんらきはぴ。:詩の間


『私はアゴヒゲ。』
『水』
『骨』
『せせらぎのきさらぎ』
リズムリアル
『甘い砂漠』
『山道の岩』
『強き事儚しきか』
『愛の煮汁』
『旗幟』
『stupid baby』
『クレイマン』
『つんざき』
『不整脈の所為にして』
『空船の絵空事』
『無縁季節』
『果実酒』
『ペイガンヴィクティム』
『詭詐』
『逐一報告』
『紅傘』
『臆病籠』
『倒錯』
『錯覚』
『道路』
『渡し賃』
『空っぽ』
『祈り』
『欲求』
『情熱蜃気楼』
『トウロウバナ』
『宵は貴方だけのものじゃない』
『最終戦争』
『LOAD』
『分解』
『ひと痛み』
『芯まで熱く』
『未断』
『月の丘』
『黒い林檎を齧らせて』
『方忌』
『交換』
『背走 憎むなんて諦めなさい』
『Let me be close to you』
『quaint notion clog me』
『それでも未だ死んでいない』
『wer ist in mir?』
『好きなもの』



『好きなもの』

唯暗く広がる海に漂う木片に掴まって居ります。
奪われたなら苦しみにもがいて溺れて諦めるでしょう。

自分の為に生きてください。
誰彼の為に生きるというのも目的として自分の為なのです。

其は自分では無いから殺してはいけないのです。

自分の所為で逝ったなんて思わないで下さい。
其を望んでいるわけではありません。

目的が欲しいというが望みなのです。
傷付ける事が望みではありません。

これ以上頑張らないで下さい。
これ以上責めないで下さい。




『wer ist in mir?』

喉が渇いて
水が欲しい
紛らわして
飢えを凌ぐばかり




『それでも未だ死んでいない』

例えば茶緑の根が私の腕に侵入するなら
自分の領域だと強く撥ねる事が出来ますか

例えば名も知らぬと謳った花の名を忘れている事に気付いたなら
自らの記憶を辿り見つけ出す事が出来ますか

誰かが云った
誰が云ったかなんて忘れてしまったよ

何とかと云っていた
何と云ったかなんて忘れてしまったよ

私の中で闇が生まれるなんてよく言ったもの
始めから種は蒔かれて有った

中で育つか否かは外の環境からの影響と
其何れを内に入れるか

高が花弁一片に縋って
唯の零滴一滴に踊って

其でも理由が欲しかったと嘆いて笑って嘆いて
忙しく虚無を旅していた

標の血液だけが時を刻んで浅い風の運動を押し流して
願ってばかりで与えもせずに

与え方は誰が教えてくれますか

未だに見つけられないねと笑ったこれは誰ですか




『quaint notion clog me』

君しか叫ばないの
君だけ嗄らしているの

だから聞こえないのさ

君しか拾わないの
君だけ消しているの

だから見えないのさ




『Let me be close to you』

パラッパッパラー パラッパッパラー
罪作り 捕らえて放さない
放してくれよ 鈍い奴

口濯ぎ 浮かれて及ばない
応えてくれよ 難い奴

クエイエネステンミー 適えて敵わない
叶えてくれよ 憎い奴

パラッパッパラー パラッパッパラー
自分じゃないみたいに狂ってるのさ
お前しか居ないと思えるのさ

パラッパッパラー パラッパッパラー
愚者救い うたれて泣かない
我慢するなよ 弱い奴

パラッパッパラー パラッパッパラー




『背走 憎むなんて諦めなさい』

喚き散らして
頭の中が滲んでる
独りでに出来るようになるの?

摘み取るものは未だ生まれていないのさ

蒼の歯車が軋む空で咆哮響く頂に雲
黒い鳥は死んでしまった
黒い林檎は蛇の躯を締め付けるの
未だ果たせない雫に赦しを請うの

活目の先に転がっていた杖は8秒で灰被り
美味しそうなカメレオンに刺さる雑踏
砕けた木賊色の痙攣が
血液を弄(まさぐ)る享楽にうつ伏せで穴開(あなあき)朱傘(しゅがらかさ)

差異が混じった石垣の上の猫が問う
いつから消えている
失った時から
嵐の真ん中で穏やかに佇む梟が問う
いつまで消えている
手に入れる時迄

毛玉の先のどんぐりが山彦の中へ解けていく
鈴蘭を頬張ってポーポーを見上げるんだ

呼び起こす声は聞こえない

変色を免れた爪先に枝が生えて
蔵の壁に潜む骨が纏わりつく

本物はどれだ

己が手械で手首に裂傷
けんつうの老人が賄った殃禍に抱(いだ)かれて喘ぐ

いつまで嘆いているの
生まれてから嘆くの
いつから嘆いているの
死ぬまで嘆くの

そら罪を持った子供達が
穢れた大地を踏みしめる
そら命を知らない子供達が
気付いた頃にはもう遅い

眠る前に感謝をしよう

捌かれたライオンが手を伸ばしハイエナの子供を疵付けるのさ

追い駆け回すコウノトリはキャベツの中に頭を圧し込めるのさ

正義を囁いた喉がくすんで紛って覆るのさ

言葉だけ紡いで手を離す
もう理解は乞えたでしょう
鍵だけ渡して空(から)落とす
もう隙間は癒えたでしょう


胸に架けよ千の渦


命の胚胎は相の賭博


上(かみ)は堕ちた




『交換』

誰によっての等価かを知るのです




『方忌』

水の中を通って
怯えながら滞るのに飽きてしまいたい
息吹出来ない

氷の中に篭って
拒みながら求めるのに疲れてしまいたい
身じろぎ出来ない

水の中を流れて
咽ながら溺れるのに慣れてしまいたい

起き上がりたい




『黒い林檎を齧らせて』

神なんてもう居ない
何を神と呼ぶかなんだ。




『月の丘』

犇いた上の丘に 月が昇るから
見上げて 掴もうとするの
上手に生きれないから
知っているの 掴めない事を




『未断』

軸と境の闡明は必ずしも、と
画然求めて確然無し。
我が優柔で無くば廓然となるであろうに。




『芯まで熱く』

此世とは 果敢無きよ




『ひと痛み』

私達の飲み水は 枯れた水源の涙




『分解』

儲かります。信者狩ります。




『LOAD』

心拍が焦る 途轍もなく




『最終戦争』

舞い散れ 花弁よ
朽ち果てろ 樹木よ
乾涸びろ 水海よ
干上れ 大地よ

押し寄せよ 津波よ 洗流せ




『宵は貴方だけのものじゃない』

染み渡る空に滲む 赤色雨
茜向かい 黄昏越えて




『トウロウバナ』

窈然と立昇る遺骸の痕
閑寂の浅場の暈
もう戻れない
さよならと云いたくない




『情熱蜃気楼』

さけべ だいちよ ささやかな はるかへ




『欲求』

例えば私は愛されていると肌で心で感じたい
在るがまま支えが必要でないと嘯く心算は毛頭無い




『祈り』

縋るのは誰にでも出来る
願うばかりで指銜えて
下る必要など無い
今を居きれば自ずと手に入る




『空っぽ』

何時まで経っても空なんて掴めやしないだろ




『渡し賃』

幾ら掻いても掻き消される
行き交う波にもがいていた
船頭に渡す手持ちは無い
岸に戻されはしたくない




『道路』

ある日街路樹の元ふわり布落ちてきた
拾って広げたら雑音が動き出した
声のする方にあなたを見つけた
掃って渡したら世界が動き出した




『錯覚』

傷付いた心隠し合うのでしょう
カーテン越しだった太陽眩し過ぎて
幾つもの気持ぶつけ合うのでしょう
届かなかった階段の次踏み越えて
あなたの深海(ふかみ)へ




『倒錯』

混じり気の無い青山(せいざん)
淘汰された灰の中
アジる風薙ぐ廃残(はいざん)
決(さく)られた地(つち)の中




『臆病籠』

竦むから足元は無いの声が必要なの
軋むから羽音は無いの朝霧が邪魔なの




『紅傘』

か細い鳴声包(ほう)か小夜時雨(さよしぐれ)




『逐一報告』

アスファルトの音色 黄白色のアフォリズム




『詭詐(きさ)』

行止りに日陰蔓(ひかげのかずら)




『ペイガンヴィクティム』

盲進其剣に戦没 神に召さるのかしら
疵付いた異教徒の犠牲者よ 高らかに仰視 玉座へと




『果実酒』

穢れ無き少女胸貫く十字
驕りの世界に飽きた者よ




『無縁季節』

惨憺たる軌跡よ 惨憺たる奇跡よ




『空船(くうせん)の絵空事』

凄然(せいぜん)の星空が 君を覆うから




『不整脈の所為にして』

全てに意味なんて求めない 後悔する為に生きている




『つんざき』

燃え尽きて 太陽に 近付いて




『クレイマン』

冷たくて暖かい




『stupid baby』

つまらない旅に費やして何処に何を見たの私
終わらない如在余らせて鈍い白の風車私
決まらない声で叫び続けて先に向こう行くの私




『旗幟(きし)』

さえずりなど欲しくなかった 旋律など欲しくなかった




『愛の煮汁』

狂った様に綺麗な詩を




『強き事儚しきか』

時には諦めを胸に 戒めを胸に




『山道の岩』

3番目の深緑に下りなさい。振り向かぬように。振り返らぬように。




『甘い砂漠』

自分の為にできる事はそれほど残ってない。




『リズムリアル』

喉に何か痞えるのは貴方が満たされているからです。




『せせらぎのきさらぎ』

喧しき元を捕らえ 鳴かず飛ばず 易きに消えた。




『骨』

上向かば地 下向かば月
上向かば原 下向かば殻
上向かば砂 下向かば海
上向かば短 下向かば寛
上向かば流 下向かば苦

都は廃る 散らなん 閊う角 霧らなん




『水』


水の溜まる様が好き
水の溢れる様が好き
水の流るる様が好き

水だ。




『私はアゴヒゲ。』


私はあれのアゴヒゲと呼ばれている
はじめは幼かったが、
いまはもう身長も伸びて、しっかりとした風格を帯びているはずだ。
白い毛もさりげなく混ざってしまっている。
だが、私の人生はもう終わってしまうらしい。
刃物が私に向かって進んでくる。
さようなら、居心地の良いナイスAGO。(fin


reset





the author: koh

無断使用転載等ご遠慮下さい
Please do not use these without permission.

文芸Webサーチ

Copyright © 2005-2006 koh/黒子逸治 All Rights Reserved.